Taproot〜アメリカ発。自閉症児タマ&教育の現場

自閉症児タマの母/特別学級職員のmakiが発信する日々のあれこれ。

February 2015

「あ~。ついに来たか。」
1年生だったタマの宿題に足し算のプリントが入っていました。
プリントにはこんな物が。
ナンバーライン
このチャチくさい「紙製定規」のような物。
これは「ナンバーライン」と呼ばれる物。
私の住む学校区では、普通学級も特別支援学級も、みんなこのナンバーラインを使って計算を学ぶというのです。
「なので、自宅でもナンバーラインで計算の練習をして下さい。」と、担任からメモも。

使い方はコチラ。
例えば、1+1なら
①「最初の数字は?」→「1」
②指で数字の「1」を押さえる。
③「足し算だから右にジャンプですよ。」→「次の数字は?」→「1」
④「そうですね。1ですね。じゃあ、いくつジャンプするのかな?」→「1つ」
➄「そうですね。じゃあ1つジャンプしましょう。」→「指はどの数字の上かな?」
⑥「2!」
⑦「そうです。1+1=2です。」

ナンバーラインでの計算方法を見た時の私の素直な意見。
こりゃダメだ。」

1+1=2のような足し算の基本を把握するのに、
余計なステップが多すぎる
と思ったからです。
タマの様に言葉の聞き取りが苦手な子供達には「はぁ?」となる事間違いなし。
つまりは「説明が難しすぎる」「もっと簡潔にしてくれ」なのです。

私は近所の1ドルショップに走りました。
そこでゲットした物は...。
●ミニぽわぽわセット
●小魚デラックスセット(プラスチック製のおもちゃ)

ぽわぽわは、「エルビス事件」でお馴染みのアイテム。笑
タマにとって「丸い物」は目からハートの大好きな形。←タマは「丸フェチ」で有名。
ましてやぽわぽわと来れば、タマの視線は釘づけ。

魚は、年齢と共に増えてきたタマの大好きな物の1つ。
絵を描く事が大好きなタマ。この頃描いていた絵はほとんどが魚。←タマは「海の生物」が大好き。
タマのお気にの映画「ニモ」に出てくる青い魚、ドリー「そっくりさん」の小魚デラックスセットとなれば、これまたタマの視線は釘づけ。

ABAでの重要なポイントの1つに、「相手のアテンションをしっかり掴む」があります。
「視線が合いにくい」という特徴が自閉症にはありますが、ここで言う「アテンションを掴む」というのは、ずーっと相手の目を見ていなくてはダメという意味ではありません。
数秒でもレッスンの出だし・途中に話し手の目を見てくれればいいのです。
「ちゃんと聞いている・理解している」というのは本人の表情から読み取れますから。

【余談】いわゆる「健常人」の私達でもペットの犬・猫でも、相手の目をずーと見ている事はありませんから。笑
これでは話し手も妙な心地悪さを感じてしまいますよね。
以前、読んだ心理学の本にも書いてありましたが、人と話す時には、誰でもだいたい7秒に1度は相手から目を離しているそうです。もし、ずっと目を見ている人がいたら、その人はサイコパス、もしくは、非常に攻撃的な性質の人らしいです。

くっくっく。これで計算はバッチリなはず。」
成功をすぐそこに感じ、湧き上がる希望に1ドルショップで既に独りほくそ笑む私。
ただの怪しい女だった事は確実ですが、そんな事はどうでもいいのです。
タマがついに計算ができる時が来ると思うと、その進歩が嬉しくて嬉しくて仕方がなかったので。

そうです。
ナンバーラインでの計算は却下し、タマの好きなアイテムをテーブルに乗せて、実際に触って、見てという地味な、、、っというか「普通」の方法でタマに計算のコンセプト・パターンに気づいてもらおうと思ったのです。

まずはぽわぽわでトライ。
満面の笑みでぽわぽわに釘づけ→私よりぽわぽわ→「きゃ~‼」っとこれ以上ない幸せ感いっぱいの歓声をあげる→まるで大金持ちが札束を空中にバラまくように、100以上もの全ぽわぽわを空中に投上げる→さっきまで「あぶあぶ」言っていた3男坊がヤケに静かに→3男坊。口いっぱいにミニぽわぽわを入れてよだれを出してニコニコしている→焦る私→1+1=2どころではない。
ミニぽわぽわ=失策

でも、大丈夫!
小魚デラックスセットがありますから。
そこいら中に散らばったミニぽわぽわを拾い、隠し、次のアイテムでトライ。
満面の笑みでドリー「そっくりさん」に釘づけ→そっくりさんをテーブルの上にキレイに横並びに(物を並べるのが好き・得意なのも自閉症児の特徴の1つ)→両手に1匹ずつそっくりさんを持ち、「魚が泳ぐごっこ」を始める→「ニモ」で有名なドリーのセリフの連発→「タマ!こっちを見て!」とアテンションを掴もうとしても、断固たる「NO」→そこへ3男坊の手が小魚に忍び寄る→だんだんムッとしてくる私→1+1=2どころではない。
小魚デラックスセット=失策

成功はすぐそこ感があんなにもあったのに、まんまと予想と希望を裏切るこの結果。
や~~~だ~~~!!!」っと叫びました。

「タマにわかる方法」は一体なんだろう?
ネットで色々検索していると、
「おおおぉぉぉぉ?!」と思える本の宣伝を目にしたのです。

「自閉を超えて 上・下」(学苑社・石井 聖 著 ISBN4-7614-9308-9)

この本には「数という名の特急列車が走る」という章もあり、ここで計算の概念学習についても触れているではありませんか~

夏休みもすぐ。
毎年恒例、夏休み日本一時帰国ももうすぐ。

3か月ある長いアメリカの夏休み。
私のやる事は言うまでもなく
タマと計算マスター

「日本に行ったら有隣堂。」
心に決めていざ一時帰国。
どうなるタマの計算マスター?

つづく

「テスト受けてる間、家で仕事しとくから。行ってきな。」
このダンナの一言で、次の日テストを受けに行けたのですが...。
結果はど~んと
「不合格」
きゃぁぁぁ!
人生初のテスト不合格。
重くなるどころか、ぴゅ~っ とぶっ飛びました。笑

学校区人事部にお礼の電話をすると、たまたまあの日の試験官。
「合格までほんの数点足りなかったんですよ。」と。
「あ~。きっとあれだ。」 すぐにわかりました。

答えに迷った問題はいくつかありましたが、その中でも更に迷いに迷った4択問題での2問。
みなさんならどちらを選びますか?

【問1】今日は避難訓練。特別学級助教員としてあなたがしなくてはいけない事は?
消去法で残った2択。
↓ ↓ ↓
①冷静に振る舞う。
②上司からの指示を待つ。

この問題を読んだ時、私の頭の中はこんな風になっていました。
「『避難訓練』。っという事は、職員なら事前に知っている事。『振る舞う』必要はないでしょ。冷静じゃない方がおかしいじゃん。でも、待て待て。助教員の鉄則=上司の指示に従い動け。」

【問2】特別学級助教員としてあなたが常に念頭に置くべき事は?
消去法で残った2択。
↓ ↓ ↓
①えこひいきをしない。
②生徒達の手本となる行動を示す。

これは、どちらも正しいと思いましたね。
結局、モヤモヤ感一杯で②を選んだのですが、どちらも正当な答えとして論議すれば良かったと思いました。

そうなんです。
論議できるんです。笑
テストが始まる前の説明で試験官が言いました。
「4択問題のところ。最善の答えを1つ選ぶ事。もし選択肢中、複数の正解があると考える場合、その正当性を論議するように。」と。

なんでその時論議しなかったのか?
三男坊が発熱で辛い→ダンナが私の帰りを待って家で仕事をしている→早く家に帰らなきゃ‼
と心中ザワザワ。
「集中したい。」そう思った矢先。
テスト中に突然、 じ~  じ~ じ~
かなりの音量で非常ベルが 。
そして、 じっ、じじ、じっ、じ~、じっ、 じ~ と誰でも知っている「あの」リズムにベルが変化(へんげ)。
隣の受験者が笑いをこらえ、両掌を空に広げ、肩をぴょこっと上げて「え?え?」とジェスチャーと表情で私に語っているではありませんか。
私も笑いをこらえ、ジェスチャーと表情で「I don't know!(わからない!)」と応えました。
試験官をチラ見すると、顔色ひとつ変えずに直立。

「やや?これってもしかしたら『公務員としていかなる状況でも冷静を保てるか』のテスト?ガラスの仮面(美内すずえ・白泉社)のヘレン・ケラーのオーディションでもこんなのあったな。」と自問→納得。
隣の受験者と「頭上に架空の「?=クエスチョンマーク」&お手上げジェスチャー」を交わし、答案用紙と再度向き合いました。

テスト時間は2時間だったのですが、1時間ちょいで終わらせ、家に急いで帰ろうとエレベーターに走ると、「故障修理中につき階段を利用して下さい。」と手書きの張り紙が。
あ。あの非常ベルはエレベーター故障で閉じ込められた人が助けを求めてだったんだ」と判明。
「ガラスの仮面とか...。」
深読みしすぎていた自分がおかしくてぷぷぷっ と笑いながら試験会場を去ったのでした。

1度目のチャレンジは不合格。
悔しくて悔しくて仕方がなかったのは、療育、子供の行動心理、特別学級の目的などの問題で迷ったのではなく、日常生活でもあり得る状況での問題で答えに迷った事。
どうしてもやりたい仕事。
1度の失敗で諦めるわけがありません。

数か月後。
再度チャレンジの時はやってきたのです。

子供達。←OK!
全員元気に学校。←OK!
戸締り。←OK!
心の準備。←OK!

いざ試験会場へ。
テストが始まると、今度は前回の非常ベルとは比較にもならない程の外からの爆音。
試験会場のビルもガタガタ揺れました。
「これは絶対におかしい。」
受験者もざわついています。
「情報が入り次第お知らせします。今はテストに集中して下さい。Good luck.」という試験官の冷静な一言で、会場のざわつき音が紙の上を走る鉛筆の音に変わりました。

「終了時間です。」
気が付いたら、試験会場には私ともう1人の受験者の2人しか残っていなかったというくらいテストに集中できました。手応えバッチリ 。論議もバッチリ

答案を試験官に提出すると、あの爆音は街の空港での離陸失敗・乗員乗客全員死亡事故だったと知らされ、ショックを受けました。

数日後、合否通知が届きました。
「合格」
後日、人事部出頭。
必要書類の提出を済ませ、すべてクリアーになると、
助教員を必要としている学校から直接、面接のオファーが。
最初にオファーが来た学校に面接に行き、仕事を頂けたのです‼

再度、辞令をもらいに人事部出頭。
「いつから仕事始めたい?」と聞かれ、
「来週の月曜日。5月9日からお願いします。」
と答えました。
辞令を受けた次の日からでも働きには行けたのですが、1週間先のこの日を選んだ理由。
●この週の5月6日(金)は子供達の学校で「母の日」のイベントが用意されていたんです。仕事に戻ったら、子供達の学校のイベントやボランティアにはほとんど参加できなくなる。仕事に戻る前に、子供達が先生達と心を込めて用意してくれた「母の日」イベントに最後に行きたいと思ったから。

●結婚して家に入り主婦としてのこれまでの生活。11年ぶりに仕事復帰できる。私が心からやりたいと思う仕事ができる。これも、子供達がみんな元気に成長して外の世界(学校・保育園)でも学び始めたから。苦しかった淵底から這い上がって自閉症という障害に向き合い、自分でも予想もしていなかった方向と世界に進めた事への驚きと感謝。サポートしてくれたみんなへの感謝。色々な事を教えてくれたタマへの気持ち。色々な意味での新しい出発には最高の日だから。

そして5月9日。
それは私の誕生日。
私は、働くMom,特別支援学級助教員として初出勤したのでした。

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