Taproot〜アメリカ発。自閉症児タマ&教育の現場

自閉症児タマの母/特別学級職員のmakiが発信する日々のあれこれ。

December 2014


一本の不穏な電話。
それは、学校区事務局のABAプログラムマネージャーからでした。

マネージャー:「年間契約更新の時期が近づき、現在のABAサービス提供会社の更新はしない事になったので、来月からは別のABAサービス会社になります。」と。

maki: 「WHAT? そんなバカな~!なんでですかぁ ???」

マネージャー: 「僕自身も残念なのですが、上が決めた事なので。」

maki: 「上って誰ですか?今のABA会社になって、タマも私も進歩ができている時に、何が理由で更新しないって決めたんですか?」

マネージャー:「上に聞いて下さい。連絡先はコレです。」

博士号付き の女性の名前と肩書(特別支援教育のトップ)を聞いて、思わず想像してしまったのは、金髪ショートボブ 。ビシッと黒のスーツに黒のハイヒール。
しかし、相手がどんな人であろうと納得の行く理由を直接聞けるまでは「はい。わかりました。」と簡単に引き下がるワケには行きません。
タマと私にとっては(とっても)x10重要な事ですから。

「親にABA提供会社を選ぶ権利はない。」と言う州の法律【注1】も知っていましたし、私の住む町の学校区は予算削除で財政が厳しく、高額なABAサービスから切って行こうとしている事も知っていました。
でも‼「予算が理由で特別支援を受けている生徒達のサービスを除去してはいけない。」という法律【注2】も知っていたので、メールを早速送信し、丁重に質問をしました。【注1】I特別支援を要する生徒の親にはカリフォルニア州特別支援教育法 「生徒と親の権利」が簡易に書かれたパンフレットを配布する事が学校区に義務付けられている。更に詳しい事を知りたければ自分でウェブで。【注2】この法律は学校区配布のパンフレットには記載されていません。当たり前ですよね。親が知らない方が学校区には有利な法律ですから。笑

返答は
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
「学校区と契約雇用しているABAサービス業者を2社にまとめる事で、更に洗練&フォーカスしたサービスを提供するためです。息子さんのケースに付く次のABA提供会社は長年の実績もあり、今のABA提供会社にも劣らないはずです。スムースに引継ぎができるように1か月間、両ABA提供会社が共同でサービスをしますので。」

ちっちっちっ
侮るべからず。
自閉症児を育てているお母さん仲間ネットワーク

ネットワーク情報によると、学校区が絞ろうとしている2社のABA提供会社のうち1つは、急激に規模拡大したために、セラピストのクオリティーが大幅ダウンした「あの」会社だったのです。そうです。「変えて下さい。」と嘆願した会社です。もちろん、次のタマのケースにはこの会社ではなく、この学校区ではよく聞くもう1つの会社だったのです。

「さすが。予算の事には触れなかったな。笑 それにしても何?このマニュアル通りの返答?タマの事も、今のABA会社がどれだけタマのニーズに合ったサービスを提供してくれているかも全く知らない「上の人」なのに、『更に洗練&
フォーカスしたサービス』なんてどうして言えたもんだろう?」

そう思った私は、以前と今のABAサービス会社でのタマの進歩のデータを徹底的に調べ直しました。
私が特に注目したのは、「物の機能」の部分でした。

それで浮彫になった事実。

最初の会社=A。
今の会社=B。

A→物の機能を教えるのに使ったABA→DTT(Discrete Trial Training)
B→物の機能を教えるのに使ったABA→VB(Verbal Behavior)ベース

~レッスンの違い~
A

「これは何?」→「ハサミ」(E)
「ハサミは何をするために使うの?」→「切るため」(R)

B

「これは何?」→「ハサミ」(E)
「ハサミはどれ?(絵カードの中から)」→ハサミのカードを渡す(R)
「切るために使うのは?(絵カードの中から)」→ハサミのカードを渡す(R)
「ハサミをちょうだい。」→ハサミを渡す(R)
「ハサミは何をするために使うの?」→「切るため」(E)
「切るために使う物は?」→「ハサミ」(E)
故意にハサミが必要な状況を造って「ハサミ?」→「ハサミ」(E)
上に同じく   「ハサミ(が欲しい) 」→「ハサミが欲しいです。」と単語を増やして言えるようにプロンプトを出す(E)
※「手助け」「ヒント」を与える事。

(R)=Receptive→相手の言っている事を理解して行動を起こす。(言葉は出さなくてもいい)
(E)=Expressive→相手に伝える。→発語しなくてはいけない。

違いがわかるでしょうか?
A会社はいわばガチガチの型にはまった、2つの定型文のみを使って「ハサミ」だけの機能を教え込もうとしていました。B会社はABAの応用を利かせた方法で、色々な角度から「ハサミ」「切るため」をタマに示していましたし、ハサミ以外の物もレッスンに組み込んでいたので、調子がいいと、2時間半の自宅セラピーで複数個の物の機能をマスターする事ができていました。

そして、当時の会社提出書類を読み返してみると、なんと「60%正確にハサミの機能」1つしかマスターできていなかったにも関わらず、「このターゲットはマスターしました。」となっていたではないですか。
あちゃ~ !」
自己嫌悪 に陥りましたね。
どうしてもっとちゃんと見ていなかったんだろうと...。
言い訳にしかなりませんが、この時は最初の会社のセラピストのクオリティーが下がっていた頃。
もうやだ。」と思っていた時。プラス、毎日のバタバタの中、分厚いIEP+ABA会社が提出したレポートにもささっと目を通していた程度。本当にダメな私でした。

新しい会社になってからぐんぐん伸びた「物の機能」のマスターの数。
学校側からの「契約更新ナシ」という連絡がなければ見直す事もなかったかもしれない今までのデータ比較。
それでわかったタマの進歩の違いの理由。
「後悔してるヒマはない。不穏電話はいい事だったんだ。」と気持ちを入れ替える事ができました。

更に!
この年のIEPもよ~く読み返してみると、「あらぁ~?」学校側の
決定的ミスも見つけたのです。

「この討論、もらった‼」
確信しました。

「え?何て言う企業名ですって?」
それもそのハズ。
この企業は、別の学校区ではメジャーなABA提供会社なのですが、
私の住んでいる学校区では、初めて雇うABA民間企業だったからです。
変化は時として「マイナス波」をもたらす事もありますが、このABA提供会社変更は「変えてもらってよかった~‼」っと思える「プラス波」をもらてしてくれたのです。

少し前、「ABAの傷跡。」の記事で書いたこの部分。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
「なんと
この「Cutting」1つをマスターするのに1年かかったのです。
80%ではなく、60%正確にでですよ。
ため息5000発超えの域に入ってましたね。笑 」

一般的な物の機能をなかなか認識する事ができなかったタマ。
これまでのABAでは1年で1つしかマスターできなかった物の機能。
新しい企業に変わってから、1年で80%超。合計64個マスターしたのです‼

キーはVerbal Behavior(バーバル ビヘービアー。一般的に略してVBと呼ばれる=言語行動)を基盤にしたABAアプローチにありました。VBは、B.F.スキナー(Burrhus Frederic Skinner)というアメリカの心理学者・行動分析学者が着目した言語習得法。

「名詞ばっかりになっちゃって失敗した~!」と思ったPECSの件。
タマの場合、PECSは「物には名前があるんだよ。」と認識させるのに役立ちました。
でもこれだけでは、「なぜ」言葉を使う必要があるのか、タマの様に言葉が苦手な自閉症児には理解不能。

「同じ単語1つでも、全く違った意味・目的を伝える事ができるんだよ。」と認識できるようになるVBは、PECSで名詞だけはたくさん知っていたタマにとって、「ドンピシャ 」アプローチだったのです。

例えば、「水」という単語1つを発しても...。

Mand・マンド→自分の欲しい物を要求する目的。

例) のどが乾いている時に言う「水(が欲しい) 。」

Tact・タクト→意見やコメントを述べる目的。

例) 湖の水を指差して「(これが・は)水。」

Intraverbal・イントラバーバル→質問に返答する目的。

例) 「蛇口から出るのは?」→「水。」
Echoic・エコイック→相手が言った事を復唱する目的。

例) 「水?」→「水!」

という風に全く違う意味・目的を相手に伝える事ができるのです。
Echoic(エコイック)は、
1)質問への返答にもなり得るのでイントラバーバルに含まれる事もあり。
2)「意味を理解していなければ復唱は無意味だ。」という意見もあり。
でも。
無発語から始まったタマの場合、「人が言った事をマネする」という事は、私にとっては重要ポイントでもありました。その理由は、タマの言葉が出るようになる以前に読んだ、テンプル・グランディン(Temple Grandin~日本で最近有名になった東田直樹さんのように、彼女も自閉症の当事者。コロラド州立大学准教授。障害を抱えながらも社会的成功を収ている女性としてアメリカでは知名度高。) の著書に「ハイ来た!私も諦めない!」と強く思える1文があったからです。
それが、コレ。
↓ ↓ ↓ ↓
"Parents and teachers should be happy if a child can recite a perfect commercial because the brain is programmed for speech."
(もし、子供がコマーシャルを完璧に復唱できるなら、親御さんと先生は喜ぶべきです。その子の脳は言葉を話すようにプログラムされているって事ですから。)
THINKING IN PICTURES
MY LIFE WITH AUTISM
Vintage出版
Temple Grandin著より

私と同じように自閉症児を育てていらっしゃる親御さん。
「復唱は意味がないのでやめさせましょう」などと言われたとしても、諦めないで下さいね!
専門家やセラピストからの見解に耳を傾けるのは大切。
でも、自閉症の事は自閉症当事者からの見解が、どんな人からの見解より、 キラリと輝いている事 、よくありますよね。

さて、新しい企業に変わって進歩の波に乗りまくっていたタマと私ですが...。
一本の不穏な電話が掛かって来たのでありました。

そろそろ、「で?事件はどう勃発したワケ?」と思っていらっしゃる方もいらっしゃると思います。笑
勃発しますよ。次のブログで。


タマが2歳の時からお世話になっていたABAサービス提供企業。
小さすぎず大きすぎず、サービスを必要とする自閉症児と家族のニーズ(学校や自宅セラピーの時間帯など)に対応する事ができていました。

私が住んでいる町の学校区から雇われているメジャーな民間企業は、ここともう一つ別の民間企業。
タマが5歳になるちょっと前からABAを必要とする子供の数が大幅にアップしたようで、セラピストの数が需要に合わなくなって来てしまったのです。
そのため、会社はどんどん新しいセラピストを雇い、十分なトレーニングができていない人達が「セラピスト」とし活動しだしたのです。

タマは、アナ→ビビアンと、経験豊富なセラピストが付いていたのでラッキーだったのですが、ビビアンも途中で産休に入り、その後のスゴ腕ジェシカもイギリスでセラピストをする仕事が舞い込み渡英。イブの後にずっと担当してくれていたコンサルタントも、急激に大きくなり過ぎた会社に不満を抱き退社。

この後にタマのケースに付いたセラピストもコンサルタントも新入社員。
このままセラピーを続行するのも考えさせられてしまうくらいめちゃくちゃでした
親がセラピストとコンサルタントをトレーニングしているという風に立場が逆転してしまっていたのです。
タマの担任でさえも、「タマ専属のセラピストとして、なんのために学校に来ているかわからない。」と不満を吐露。

「セラピー会社を選ぶ権利は学校区にあり(お金を払っているのは学校区だから)、親に選ぶ権利はない」というカリフォルニア州の法律も知っていましたし、「別のセラピー提供会社に変更したって、今よりもいいセラピストに当たる保障はないよ。」とお母さん仲間にも言われましたが、「それでもいい」 と強く感じるほど、セラピーの質がガタ落ちだったのです。

学校事務局の自閉症プログラム担当に「セラピー提供会社変更」の申請をして待つこと数か月。
ついに電話が掛かってきました‼
「タマの新しいABAセラピーは、XXという民間企業に決まりました。」と。
「え?何て言う企業名ですって?」っと聞き返すくらい、ここの学校区内では聞いた事のない名前でした。


私も今までに数回やりましたよ~
こんな感じ⇊のやり取りを。

maki: 「先日見学した○○学校のクラス。タマのニーズよりも重度な生徒向けに感じたので、別のクラスを紹介して下さい。」
学校:「○○学校以外だと、××学校がありますけど、見学してみますか?」
「本当は△△学校の見学に行きたいんだけどな。」っと思っても、そのまま言ってはアウトです。こんな時にはこう行きます。
maki:「△△学校のクラスの事を聞いたのですが(本当は先回りして自分で調べて既に情報は持っているけど。無知のフリ。) 、そこのクラスはどんな感じですか?」
学校: 「そこのクラスなら自閉症の生徒でも入れるから見学行ってみますか?」
maki: 「YES! Please!
と、この流れに持って行ければOKです。

T学校からM学校に転校したタマ。
一度の見学でOKと判断しましたが、心配材料もありました。
T学校ではMS(中度~重度)クラスに在籍していたタマ。
M学校はMM(軽度~中度)クラス。
タマ顔負けの「雄叫び」を上げている生徒もいる。
脱走生徒もいる。
巨体の生徒もいる。
タマ大丈夫かな?
お豆さんのように体の小さなタマ。
言葉がうまく出せないタマ。
自分の事をちゃんと守れるかな?

不安な気持ちでいた時、「maki、自分の中での考えを変えなさい。学校側の基準ではタマの事を低機能と判断するかもしれないけど、そんな事気にしない事。低機能とか高機能とかに縛られないで‼ タマの能力と可能性は母親のmakiこそが一番わかっているでしょう! M学校なら、タマよりも言葉がたくさん出せる生徒が多くいるから、タマにとってはいい刺激になるはず。」と担任から言葉を頂き、「よぉしやってみるしかない‼」と思ったのです。

現実は...。
さすがMM
レベル高っ

T学校在学中にアルファベットはマスター。
PECSで言葉(名詞ばかりでしたが。あはは。)も増えたタマ。
でも、それだけではクラスに付いて行けないのです。
「できない理由を探すヒマがあるなら、できるようになる方法を見つけよう(=ABA)」。
心がポキッと折れそうになる度、自分に言い聞かせていた言葉。
タマの課題=私の課題
なわけで、とんでもなく忙しい毎日になりました。
(産まれたばかりの赤ちゃんもいたし。笑 )

そんな慌ただしい中、偽セレブ保育園からずーっとお世話になっていたABAサービス提供会社にも大きな変化が。
セラピストのクオリティーが大幅ダウン してしまったのです。


「現に自閉症の生徒もクラスにいますが、その生徒達は診断名を言語発達遅延に変えてここのクラスに入っているんです。あなたのお子様も診断名を変えられるくらい高機能自閉症児ですか?」

という学校側からの質問。
答えに困っている私がいました。

ドクターは、タマ全体を見て、知的障害のない「高機能(High Functioning)自閉症」と診断。
でも、学校側が定義する「高機能自閉症」とは「言葉がどれだけ話せるか」で判断。
タマは言葉が一番苦手なので、それだけで「低機能(Low Functioning)自閉症」と判断されます。
その上、「自閉症」診断を「言語発達遅延」診断に変えると、ABAサービスも除去されてしまうのです。
私が住む町の学校区では「自閉症」診断の生徒限定でABAサービスをつける決まりになっているからです。
この時初めて知った内容・規則でした。

勉強になりましたが、ABAは他の診断名ではつけてもらえないとは...。(←サービスが高額なので)
「高機能だの低機能だのっていちいち線引きしないで本当にニーズに合ったクラスに入れればいいのに。それと、診断名に関わらず必要な生徒全員がABAサービスを受けられたらいいのに...。」
何かしっくりこない気持ちで
「タマにはABAサービスが必要なので診断名は変えられません。ありがとうございました。」と、電話を切りました。

ちょうどこの時、T学校の次にタマをどこのクラスに入れるか「クラス選び」をしている時だったので、お兄ちゃんが通う学校の特別支援学級はリストから外れました。

町にある小学校の数→56。
どこの学校にどんな特別支援学級があるのかわからなかったので「クラス選び」は本当に大変でした。
お母さん仲間と一緒に情報を集めました。

それでついでに学んだ事は「クラス選び」に関する学校側の「決まり」とそれに対応するノウハウ
これがまたムヅ痒いんです。

①親の意向のみでクラスを選んだ場合、バスサービスは除去される。
要するに、学校の意向を聞かないなら学校送迎は「ご自分でどうぞ」という事。

②学校側の推薦するクラスには絶対に一度見学に行かなくてはいけない。
もちろん、親が「ここの学校のこのクラスを見学したい」と言えますが、この言い方だと①の「親の意向のみ」と判断されるので、バスサービスをキープするためには、形式上「担任からの(=学校側)推薦」とするのがポイント。

③見学は、学校事務局担当者に連絡をし、予約を入れなくてはいけない。
予約を取るのに数週間かかるので、毎日でも事務局に「まだですか?」催促ラブコールを入れるのがベスト。

自分の子供のニーズに合ったクラスが見つかるまで、このプロセス(←と言うか騙し合い 笑?!)が続くのです。

親が「このクラスでOK」と一発決定すれば万事OKなのですが、「このクラスはNO」となった場合、更なる騙し合いプロセスが続きます。ここからは担任とのやり取りではなく、事務局とのやり取りになるので、重要点はただ一つ。実際は親の意向であっても、見学希望の学校を事務局(学校側)が提示したという風に持っていかなくてはならないのです。

親は「子供のニーズのために」
学校は「州からの特別支援学級用に出る予算セーブのために」
「歳末助け合い」ならぬ「お粗末騙し合い」
の連続なのであります。笑

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