なぜ「自閉症の人達への指導法=ABA」が誤解なのか。

ABA→Applied Behavior Analysis=応用行動分析学とは、
①行動の記述
②行動の説明
③行動の予測
④行動の制御(または修正)
という基本に沿った心理学。

自閉症に限らずあらゆる人&動物全般が取る行動を予測し、制御・修正に応用されている学問であり、自閉症療育のためだけに開発された指導法ではないからです。心理学に基づく行動理論を自閉症を始めとする発達障害のある人達にも応用しているのがABAなのです。
ABAは、スポーツの試合時の行動、ギャンブル癖の人の行動、ト殺場でいかにして牛の恐怖や痛みを和らげる事ができるかなど、あらゆる分野で応用されています。

言葉が無かったタマの発語を促すのに使用したPECSもABAのアプローチです。
 「タマに一番分かりやすい方法」を見つけ出した時には、(ABAで)魔法のような劇的な改善が見られるのです。」と思った理由はココ(心理学の基本③と④)にあったのだと気が付きました。

ABAの基本が心理学に基づくものだったとも知らなかった私。
「タマにはPECSはいいかも!」「クッキーの方がいいのでは?」と、単なる直感で思った訳ですが、タマの行動(視覚優位&クッキーへの関心度)を見ていてわかっていた事をたまたま応用していたというラッキーなケースだったのです。

私もそうですが、「心理学」と聞くと引き腰になる方もいらっしゃると思います。けれど、相手と向き合えばその相手が何に興味を示すか、何を不快と思うか自然に見えてくるものです。ですから、自閉症児と関わっている親御さんやセラピストを初めとするいわゆる「専門家」は、基本となっている行動理論=相手の行動をよく見る必要があると思います。

例えばPECSでも「絵(絵画)のカード」の方が理解しやすい子、「実写のカード」の方が理解しやすい子、「どちらでも大丈夫」な子と個人で差異があります。中には、PECSの平らな2Dカードでは理解しにくく、「やかん」なら3Dの実物「やかん」を見せた方が理解しやすい子もいるのです。個人の行動を理解せず「自閉症で言葉が無いからPECS」となってしまうと、全く応用のないマニュアル通りの、いわゆる低効率・低質なABA療育になってしまうのです。だから、行動理論の理解・説明なしで「ABAが自閉症の有効な治療法です」的な記述があればそれは誤りなのです。自閉症だからと言って特定のABA指導法など無いのですから。
英語でAutism Spectrum Disorder(オウティズム スペクトラム ディスオーダー)と言う通り、自閉症の症状の度合は色々(=スペクトラム)。要するに「十人十色」なのです。これは障害者でも健常者でも言える事。同じ人間ですから。

特に「問題行動」とされる行動をABAで制御・修正する際には、問題行動の機能(目的)を見分ける必要があります。例えば、「同じことを何度も繰り返して言う」という行動1つにしても、制御・修正するために単に「ダメ!」では行動理論を無視した「なんちゃってABA」になってしまうのです。

「やりたくない」から同じ事を言って「回避」しようとしているのか?
→対処法の例:問題が10個あったとしたら、やらなくてはいけない問題数を減らし、「これが終わったら30秒だけ(ごく短い時間)絵を描いていいよ。」など、その子が好きな事を提示して、問題に取り組む姿勢を褒めながら、最終的には10問全部の問題をやり終える。その時にはその子の好きな事ができる時間を3~5分与える。

「なんとなく分かったけれど確信できない」ので「確認」したいからなのか?
→対処法の例:色々な形状の物、色々な物を見せたりしてその子が確信できるまで付き合う。

「理解できない」から「ヘルプ要求」のためなのか?
→対処法の例: ヘルプが必要な時には「手を挙げて、『わかりません。』って言えるよ。」と具体的な見本を示して、「問題行動」をいわゆる「普通・一般的な行動」に修正する。言葉の無い子達には「ヘルプ」のサイン(手話)が習得できるようにする。

というように、同じ行動でも機能も対処法も全く違うのです。

タマもありますよ。今でも。「同じ事を何度も繰り返して言う」事。
一番分かりやすい例は、タマが「たまご」という単語に気が付いた時。
"Egg! Egg! Egg!"と連呼していました。
そして、冷蔵庫を開け、ありったけのたまごをボウルに割った上、ご丁寧に泡だて器でまぜまぜし、ニコニコしながら"Egg!"。私からしたら「え~⁉ たまご1ダース全滅?」と非常に困った行動でした。お母さん仲間のティファニーのアイデアでプラスチック製「ニセたまご」も冷蔵庫に入れてみましたがダメでした。笑
これはPECSで気づいた「たまご」というモノが、割った後の別の形状でも「本当に『たまご』で合ってる?」という「確認」行動だったので、割ってしまったたまごをついでに卵焼きにして「そうだよ。『たまご』だよ。」とタマと一緒に確認したところ、1週間ほどで"Egg"連呼にピリオド。

タマが色の違いに気付き出した時もそうでした。
一番印象に残っているのは「茶色」を「確認」したかった時のタマです。
絵本を見ながら"Red" "Blue" "Green"...まではごく普通ですよね。でも、タマはある日突然、私をトイレに引っ張って行くではありませんか。
はい。笑
お察しの通りです。便器にはタマの「ナンバー2(ブツ)」が。
タマは「ナンバー2」を指さして"Brown!"と。
「え~⁉茶色の確認も『たまご』みたいにしばらくやらなきゃダメなの~?」。
ブルっ と来たのを覚えています。
が、「茶色確認」はこの1度のみで終了したので「ひゅ~ 」と内心思った事は確かです。

当時、タマのIEP提出用に描いたその時の様子コミックの一部がコチラ↓笑 FullSizeRender


ここでは「確認」という機能を果たしている「同じことを何度も繰り返して言う」行動を例に挙げましたが、行動の機能を理解せず、ただ単に「ダメ」と制御してしまうとどうなるかの想像はつきますよね。

次回は、ABAの基本をきちんと理解していなかったがためにできてしまった「傷跡」についてです。