この「事情聴取」。The Rosetti Infant-Toddler Language Scale(ロゼッティ乳幼児言語発達の目安)、 DAYC-The Developmental Assessment of Young Children(子供の発達査定)、GARS-Gilliam Autism Rating Scale(ジリアム自閉症度目安)、DP II-The Developmental Profile II(発達プロフィールII)と、色々な指標に基づいた結果に、アナが保育園で客観的に見たタマの行動+私からのインプットで統合的にデータを出すというタダものでは「事情聴取」だったのです。タマの発達状態がいかにあるか。シビアな現実を目の当たりにして凹んでいた私。 コンサルタントのイブが提示した2ページに及ぶ「タマの療育ターゲット(目標)行動とプラン33項目」を見て、「うわっ。ABAセラピーで本当にこんなことができるようになるの?」と半信半疑。「でも、できるようになったらスゴイ。」と同時に思いました。自宅でのセラピーも、Apple Tree保育園に通っていた時同様、月~金、朝9:00~11:30。週10時間のセラピー+月3時間のコンサルタントの自宅訪問。コンサルタントは親とセラピストに助言などをしてくれます。

自宅セラピー初日。イブとリビングで話している間にも、タマの部屋ではセラピーが始まっていました。「私は何をすればいいんですか?」「家事をしててもOK。セラピーに参加してもOK。中にはお昼寝をして休息を取るお母さんもいますよ。makiも、いつも通りにしていればいいんですよ。」とイブ。ABAセラピーがどんなものなのか興味津々だった私は「セラピーに参加します。」と、きっぱり言いました。約2歳8カ月だったタマ。まだ一度も私の事を"Mommy"(「お母さん」)と呼んだ事はなかったのですが、いつも傍にいた私には一番いい反応を見せてくれていました。「今日は、部屋の外でそっとセラピーの様子を見ていて下さい。」イブが言いました。最初のターゲット行動は、「顔見知りではない人もしっかり認知・見る。」だったからです。この様に、1つ1つターゲット行動を覚えさせていくトレーニングを DTT(Discrete Trial Training)と言います。

部屋を覗くと...。例のでっかいスーツケースを開け、おもちゃで遊ぶフリをしているアナ。そんなアナの存在すら気付いてもいないのか、全く興味を示していないタマ。アナも無理矢理にタマの注意を引き付けようとはしていません。「なんだこりゃ?」私は思いました。でも、しばらく見ているうちに、アナの行動の意味がわかりました。アナは、どのおもちゃが「お気に」なのか、タマの反応を見ていたのです。数分後。タマの「お気に」が判明。それは、 ボール でした。タマは、一目散にボールに向かって来ます。でも、アナはそれを自然に交わし、タマに背を向けます。これを何度か繰り返していると、タマが、ボールを持ったアナの目をやっと「何これ?(何この人)」と見たのです。その瞬間です! "Nice looking, Tama!!" (「タマ、上手に注目できたね!」)と、タマを大絶賛 誉めちぎって、タマの手に即、ボールが渡されます。このやり取りを繰り返しているうちに、「これ(アナ)を見れば、ボールがもらえる」と、タマの頭の中でもわかってくるのです。

ターゲット(目標)行動を取る→タマが喜ぶ物を与えて誉めちぎる→ターゲットの行動が身に付く。

では、ターゲットの行動ができなかった場合はどうするのか?

ターゲット行動を取らない→無視・無反応=(タマが欲しい物はもらえない)→"Try again!"(「もう一度トライ!」)のような、決して怒らない、前向きな言葉がけでもう一度やり直す。

こうして、ターゲット行動をマスターするまで何度も何度も繰り返して行く。
これがABAセラピーの基本なのです。
Applied Behavior Analysis。応用行動分析学。
難しそうな響きの名称ですが、実は基本はとってもシンプル。

しかし!基本はシンプルとは言っても、初めの頃は、親の私の行動も、アナとイブにたくさん直されましたよ。笑
例えば、セラピーセッションの最中。キッチンにいた私の所に雄叫びを上げて部屋から脱走して来たタマ。「どうしたの?」と、私はタマを抱き上げました。「maki!気持ちはわかるけど、この場合は、タマが来ても無視して下さい。」と。「何でですか?」私が聞くと、「今、タマにとっては全く興味のないトレーシング(なぞり書き)をやっているんです。タマはやりたくない事から逃げるのに部屋を脱走したんです。そこで、makiがタマを抱き上げてしまうと、タマの中では『お母さんの所に行けば、やりたくない事はやらなくてもいいんだ。』と誤解と混乱を招く事になり兼ねません。だから、無視して下さい。」と。なるほど。言葉が無く、雄叫びが唯一のコミュニケーションだったタマ。雄叫びにも「やりたくない事からの逃げ(脱走)」「誰かのアテンションが欲しい」「やりたくない事からの回避(脱走はしなくても、意図的にセラピストを無視する)」「嬉しい・悲しいの感情」など、数種類の意味があったのです。「すいません。」私に抱っこされて部屋にぽこっと戻されたタマ。数分後には再び脱走。「 ぎゃぁぁぁ~!!」絶叫タマのキッチン再来。「タマ、ごめんね。」と、心の中で何度も言いながら、鉄仮面的無反応でタマの顔も見ずに知らんぷりの私。心も鼓膜も張り裂けそうです。絶叫すること2,3分。タマの絶叫が止まるや否や、私の対応をキッチンの外で見ていたアナが、「お気に」のボールをちらっとタマに見せ、"Nice calming down, Tama!" (「タマ、上手に落ち着けたね!」)と登場。タマはボールに引き寄せられ、静かにトコトコ部屋に戻って行ったのです。部屋に入った瞬間、"Good job, Tama!!" (「タマ、よくできたね!」)と誉めちぎり。タマは、ボールで少しだけ遊べただけでなく、セラピストに「高い!高~い!」もやってもらい、「きゃ~!! 」と喜びの雄叫びを上げていました。「タマ。まだまだ先は見えないけど、二人三脚で学んで行こうね。」キッチンで、独りうるうる来ている私。な~んて事もたくさんあったのです。まるで演歌歌詞の様な世界でした。耐えてみせますこの試練...。笑